お盆のお供え物のゴミ問題について

お盆について
日本で一番大きな仏教行事ともいえる「お盆」
お盆にはご先祖様が帰ってくるとされ、それにあわせてたくさんの野菜や果物などお供え物を用意してお迎えし、供養します。
こうしたことはとても大切なことですが、同時に大量の「お供え物のゴミ」が発生しています。このことについて、私たちはもっとよく考えていかなければいけないのではないでしょうか。

お盆とお供え物のゴミ問題について

「盆はうれしや別れた人も 晴れてこの世に会いに来る」というように、先に亡くなった大切な人が、お盆になると帰ってくるといわれています。12日にお墓へお迎えに行き、自宅で精霊棚を設けて供養し、15日にご先祖様を送ります。

そのときに、野菜や果物、お菓子など、たくさんの食べ物をお供えします。そしてお盆が終わると、これらのお供え物がゴミに変わり、大量に捨てられることになるのです。

紀の川のお盆のゴミ問題

お盆にお迎えしたご先祖様は、自宅でお祀りをしたら今度は送り出します。

その習慣は様々で、無事に帰って行けるようにと送り火を焚くことが一般的のようです。それは例えば京都の「五山の送り火」が有名です。

和歌山では川へ流して送るという方法が行われていました。お寺からいただいた塔婆や、お盆の期間中にお供えした野菜や果物などの食べ物をご先祖様に見立てて、川や海に流して送るのです。

ところが、流したお供え物は「ゴミ」として川を漂うことになります。昔からの習慣だとはいえ、たくさんの人がこれを行うので、紀の川には大量のゴミが流れていました。

これに目をつけ、紀の川の環境維持のためにとお供え物のゴミ拾いの活動を始めたのが、紀北青年僧の「お供え物供養」の始まりです。紀の川のゴミ拾いから始まった活動が、灯籠流し、そしてお供え物供養へと形を変えて、現在も行われているのです。

「お供え物供養」の現状

紀の川の「お供え物ゴミ」を減らすために始めた活動は、現在「お供え物供養」として行っています。お盆の間にお供えした物をお預かりし、供養いたします。

塔婆や不要になった位牌、使わなかったおがらなど、燃える物はお焚き上げをして供養をしています。それ以外の、野菜や果物などの食べ物、花など燃えない物は、ご供養したのちにパッカー車に積み込んでゴミとして処分しています。

一日かけてたくさんの方がお供え物を持ってご先祖様を送りに来られますが、持ってこられる物の大半が、野菜や果物などの食べ物類です。その量はおよそ2.5トンにも上ります。つまり結果として、これほどの量のお供えが「ゴミ」として扱われているということなのです。

パッカー車に積み込まれる「お供え物ゴミ」

全国各地の「お供え物ゴミ」問題

お供え物によるゴミの問題は、和歌山に限ったことではありません。海や川が近い地域では、お盆に迎えたご先祖様を流して送るという風習があるようです。

また、全国各地で多くの家庭では、お盆にはたくさんのお供え物を用意してご先祖様を迎えて供養します。その後、海や川へ流すことは無いにしても、食べきれなかったり腐ってしまったりした物はゴミとして廃棄せざるを得ません。結果として、お盆が終わる頃には家庭で処理仕切れなかったお供え物がゴミとなって処分されることになります。

つまり、お盆が終わると「お供え物ゴミ」が大量に発生しているということです。

お盆の後、納骨堂に残された「お供え物ゴミ」清掃作業には数万円かかるという(曹洞宗十勝山永祥寺HP
川へ流さないように呼びかけ、お盆の「お供え物ゴミ」を一カ所に集めている(熱海ネット新聞
山のように積み上げられた「お供え物ゴミ」(熱海ネット新聞
8月16日の朝、毎年この日には「お供え物ゴミ」でいっぱいになるそう(資源リサイクル活動日誌)

お供え物の処理の仕方

お供え物をゴミとして処分する前に、できるだけ処分しない方法をとるようにしましょう。

そのための方法を紹介します

お供え物はできるだけ食べましょう

お供えした物はできるだけ食べるようにしましょう。

お供え物のお下がりをいただくことも、ご先祖様に対する供養になります。

もちろん、腐った物まで食べなさいというわけではありません。少しでもゴミとして処分する物を減らすように心がけることが大切です。

お供えする期間を短くする

お盆の時期は夏で気温も高く、お供え物が傷みやすい状態になっています。食べたくても食べられない状態になっていることもあるのではないでしょうか。

そんなときは、長時間にわたってお供えしておく必要はありません。

例えば、お盆の期間は13日から15日までありますが、13日にお供えして15日まで下げてはいけないわけではありません。

傷みやすい食べ物は、お供えして手を合わせたら、すぐに下げて食べていただいても結構です。

傷みにくい物を供える

痛みにくい物をお供えすることも一つの方法です。

例えばバナナや桃などの果物は、とても傷みやすいので、そういう物を避けてお供え物を用意しましょう。

落雁という干菓子は傷みにくい物です。果物の代わりにお菓子をお供えするのもいいでしょう。

庭にまく

お仏飯などのご飯類は、庭にまいてもいいでしょう。

「生飯(さば)」といって、自分たちが食べるご飯を少し取り、外へまいて鳥などに与えることによって、餓鬼を供養するという行いがあります。

ご飯を動物や有縁無縁の餓鬼などに施すことは、とても大きな功徳があります。

ゴミとして処分する前に、こうした方法をとるのもいいでしょう。

ただし、場所をわきまえて周辺の住民の人たちの迷惑にならないように注意しましょう。

最後に

ご先祖様の供養のために、たくさんのお供え物を用意して供養することはとても大切なことです。

しかし、それをきっかけに大量の「お供え物ゴミ」を排出して、自分たちの住む場所を汚していては、ご先祖様はどのように思うでしょうか。

時代とともに、環境とともに、それぞれにあわせてご先祖様を供養することが大切です。